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#2 春の案件

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 昨日、夕方の6時過ぎのことだ。オフィスのフロアひとつ下にいるIさんから内線があって、
「いま、ちょっと時間ありますか?」
 というから、階段を下りていったら、
「釣りのことなんですが」
 と持ちかけられた。
 Iさんとは仕事でも日常的に関わり合いがあって、会話の初めにまずは、仕事か、釣りかを明確にしなくてはならない。
 昨年、ぼくたちは春先の雪解け前に、出かけるべき川に行って、氷雨に打たれ、すこしだけ釣れて、釣れなかった分たくさん酒を飲んだ。ほとんど愉しい思い出はなかった。酒はどこで飲んでも愉しいから、わざわざ遠くに行って飲む必要なんてないのだ。
 しかし愉しくなかったからといって、釣りを止めるわけにはいかない。
 それがぼくたちふらい人の苦しいところだ。
 打ち合わせコーナーのソファに向かい合って坐って、その場で名古屋支店の同期Gに内線を掛けたが、出ない。
「出ない。仕事してるのかもな」
 会社の仲間が、ソファのまわりを行交うが、おなじビルでもひとつのフロアに400人ちかくいるから、ひとつフロアがちがうだけで、知らない顔ばかりになる。
「あらっ、bbbさん、お久しぶりです。今度はどんな案件ですか?」



 と訊いてくるのは、2年前、ぼくが持ちこんだ困難極まる案件で、幾度も苦汁を呑まされ、二度とぼくと仕事をしたくないとおもっているはずの若手女子のS子で、ぼくは、
「いやいや、まあ、こんどのはたいしたことはないんだ」
 と答えるが、しかし彼女は、
「ああ、それはそれは」
 とか意味不明な言葉を残して、逃げるように去って行く。
 Iさんと3月のカレンダーを眺めているうちに、Gから電話がかかってきて、
「なんだい、釣りの誘いかbbb」
 といって、勘がいい。というか、お互い他に用事なんてないのだ。
「いまIさんといるんだが、3月の第2週の金曜日、休み取れるか」
「ああ、いいよ」
 と極めて安直に即答する。3月は我社の年度決算月であって、最後の追い込みをかけるべく、土日返上で働くべき月だというのに。
「じゃあ、決まりだ」
「宿頼むな」
 昨年はおもいたったのが遅すぎて、良い宿を確保できなかったのだ。だから今年は早めに計画しよう、というのがIさんの魂胆だった。
 それからしばらくIさんとカメラの話をして、自分のフロアに戻った。
 机の上を整理して退社した。通勤電車に乗って自宅に帰った。駅前には猛烈な北風が吹いていた。冬はこれからなのかもしれなかった。
 風呂からあがってビールを飲み、ロッドケースからPer Brandinの7フィート6インチの4面ロッド#3番を取り出した。手に入れてから5年以上経つが、出番がすくない。
 今年はこれで始めよう。
 きっといまごろIさんとGも、自宅でロッドを眺めるか、リールを回しているはずだった。ぼくは駅前で吹きすさんでいた北風をおもった。いやいや、いまや冬至も過ぎて、日は日一日とながくなっている。 来週あたり、沖縄ではさくらが咲くだろう。
 春はもうすぐそこだ。
 ぼくはロッドをケースに収めて、窓の外で吹き荒れている北風の音を聴いていた。
*写真はクリックするとおおきくなります。
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by flybito | 2011-02-05 00:00 | エッセイ