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#25 魚の視線はわたしの物語

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 知来要さんの写真展「FishWindow」へ行ってきた。広島から東京への新幹線で途中下車して、また新幹線に乗って東京にもどった、その大阪滞在のわずか小一時間の間に、ぼくの両目は清冽な水に洗われた。単なる水中写真から突き抜けた地点に到達している知来フォトの真骨頂は透明感溢れる色彩にあり、彼にしかできない作風として写真界に認知されている。
 知来さんは主にスポーツ・フィールドで活躍してきたプロフェッショナル・カメラマンで、ながい間人間を撮ってきた。そのおなじ視線を水のなかに持ち込んだのが今回の「FishWindow」であり、対象は魚や空になった。一般的なネイチャー・プロ・フォトグラファーと決定的にちがっているのは知来さんが30年以上、ひたすら人を見つづけ、カメラを向けてきた点だ。たとえば虹鱒の産卵シーンは擬人化なしには見ることができないほどの物語性がある。この2匹が産んだ子供たちはどうなるのだろうか、と一枚の写真が想像を生む。水のなかから空を撮った写真のなかにさえ物語がある。写真を見ているわたしたちはそのとき一匹の鱒になって「FishWindow」から空を眺めている。しかし勘違いしてはいけない。空や鱒に物語があるのではない。わたしたち自身のなかに物語が内在しているのだ。 人を撮りつづけてきた優れた写真家だからこそ、見る者の記憶の底に沈んでいる色や形を水中から掬い上げ、物語にすることができるのだ。
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by flybito | 2011-06-09 21:53 | エッセイ