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#5 SHIMAネット

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 つるや釣具店のハンドクラフト展で見つけたランディング・ネットに惚れ込んだ。SHIMAネットというブランドだ。たぶんシマさんが作るランディング・ネットだから、シマネットなのだろうが、ぼくが連想したのは「シマドウフ」「シマラッキョウ」「シマザケ」だった。
 沖縄では名産品とおもわれる物品、もしくは沖縄固有の生物に、とりあえず「シマ」を冠する習慣がある。珍品好きな観光客がありがたがることを知っているから、なんでもかんでも「シマ」をつける。那覇の居酒屋のメニューにはきっと「シマダコ」とあるが、なんの変哲もないただのタコである。ちなみに与那国島には固有種の馬がいるけれども「シマウマ」とはいわない・・・・・・なんてことはまるでハンドクラフト展とは関係のない話なのだが、沖縄びいきのぼくがどこか固有な響きを聞き取った「シマネット」は事実、極めて個性的であり、 一流のアートであり 、かつ、しっかり遊んでいるし、そして、きっちりと魚を掬う道具に見えた。
 シマさんは、まずは従来のランディング・ネットの形状を否定することから始めている。魚を掬うネットは魚釣りのながい歴史のなかで、あのティアドロップ形に落ち着いていたはずだった。片手にロッドを持つとなると、残りの片手でネットを扱うしか方法がない。だからこそ片方の掌で握ることができる細さの柄が必要で、その先に魚のおおきさを想定したネットが取り付けられるわけだ。しかしそれにしても世にあるランディング・ネットはその掟に従順すぎて、まるで無個性がネットの形をまとっているといってしまいたいほどである。



 シマネットは釣り業界における既成観念への挑戦であり、デザイナーサイドからの反撃である。
 上の写真内の右二つは一見するとティアドロップ形のようだが、そもそもの発想がちがっている。ありきたりのデザインを巧みに回避しながら、しかし機能はなにひとつ犠牲にしていない。因襲に囚われないこのネットをぼくは勝手にモデルP38と呼ぶことにした。Pの字型で、かつ拳銃を想わせる形状だからワルサーP38なのだ。狙った獲物は外さないわけ。そもそも魚を捕獲するための最後の道具に「ティアドロップ」形なんて名称はゲンが悪すぎる! とシマさんがかんがえたかどうかは知らない。P38の下は文字通りひねりの利いたデザイン。屈折しているふらい人にお薦め。
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 上の写真がメジャーネット(これまた勝手な呼称ですが、大リーグ級の発想だおもう)。
 説明の必要もないほど、モノサシそのもの。そういえばモノサシはバンブーであり、軽量なのであった。そして魚体は直線ではなく、曲がるもので、曲線の利用は理にかなっているのである。
 おおきな魚を釣り上げた夕暮れ、おもむろにベストのポケットから巻き尺を取り出す。川岸に巻き尺が伸びてゆくとき、ぼくは一日が台無しになってしまう気がする。その醜さにフライフィッシングの美しさそのものが損われてしまう気さえするのだ。でも、ほんとうに尺ヤマメなのかどうか知りたい欲求もある。そんな哀れなふらい人のストイックさを解決してくれるのがこのネットだ。フレームの写真はないが、手元までネットが食い込む、きわめて独創的な形をしている。相当にいい、ぜったいにいい、乙種ふらい人として、だんぜんぼくはこのネットが欲しい。
 下はかつてテニスボーイだった方への贈り物。あの青春時代がもどってきたのだ。
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 以上のことを、ぼくはシマさんの言葉として直接聴いたわけではない。モノそのものが語っている、あるいは勝手にこちらにそうおもわせる、ところがスゴいとおもうのだ。
 ちなみにシマさんがぼくに語ってくれたのは、 彼のラディカルなデサインとは打って変わって、 娘さんへのプレゼントがネット製作のそもそものきっかけだったことと、おばあさまの形見の品である鯨尺を見ていてメジャーネットをおもいついた、というどこかほのぼのとしたエピソードだった。
 ぼくはシマさんのこういった尖ったデザインセンスと確かな職人芸による軽みこそ、フライフィッシングという遊びの核心なのだと信じている
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by flybito | 2011-02-19 19:23 | アウトフィット